カンボジアのボジ子。

カンボジアで2年の仕事を終えて一時帰国中。シェムリアップの美味しいレストラン、手作りごはん・お菓子、たまに観光・旅行ネタ、ダイエット、コスメなど広く浅~~く。

東南アジア4か国旅行記その⑧IKTTへ

皆様こんにちは!

カンボジアのボジ子です。

 

今回の事は、記事に書くか、やめとこうか・・・

とても迷いました。

しかし、色々迷った末、書くことを決めました。

 

 

IKTTへ。

IKTT(クメール伝統織物研究所)については、

こちらのブログでも数度取り上げさせていただいています。

2002年、シェムリアップ郊外に

5ヘクタールの土地を取得して始まった

「伝統の森・再生計画」以来、この場所で伝統を創り、

村を守り続けてこられた森本 喜久男さんが、

先日7月3日にお亡くなりになったことを

Facebookでのお知らせを通じて知ることになりました。

 

以前より、体調を崩されていたのは存じ上げていましたし、

数か月前に放送された情熱大陸でも、

日本に帰って治療を受けられているといった内容が

映っていました。

日本に帰って治療に専念されないのか伺ったとき、

「命は自然の中にあるものだから」と

穏やかに話されていたのが今でも忘れられません。

 

 

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 伝統の森でお会いしたのが22日の午前のこと。

お体にさわらないよう、しばらくお話させていただいたあと、

一緒に行った友人と森の中を散歩して、

また遊びにこさせて下さい、とご挨拶して、

名残惜しい気持ちになりながら帰りました。

 

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その後すぐの訃報だったので、

まだ実感が湧かないというか、

あの時はお元気にしていらっしゃったのにと

どこか信じられない気持ちで居るのが現状です。

 

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このような経緯があり、

ブログに書いていいものかと暫らく考えたのですが、

 

私は伝統の森が大好きで、森本さんのことも大好きで、

こうやって記事にすることで、

森本さんが創られた素晴らしいものが

誰かに伝わっていくきっかけになれば、と。

 

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そういう気持ちが湧いてきたのを

自分のなかで無かったことにできなかったのと、

なにより、このIKTTの訪問も私にとっては今回の旅行での

大切な思い出のひとつになっているので、

このように旅行記の中にまとめさせて頂いた次第です。

 

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伝統の森は、シェムリアップ中心部から

トゥクトゥクで40分ほどのところにある村です。

2012年秋、私が就職活動で初めてカンボジアを訪れたときは、

雨季の終わりということもあって

それはそれはガッタガタの道を、

「トゥクトゥク壊れるんちゃう?!」と思いながら

揺られていったものでした。

 

地平線の向こうから砂埃の塊が近づいてくると、

それを巻き上げているトラックとすれ違わないように

赤土の道から森の中へ、身を隠すようにトゥクトゥクごとつっこんで、

トラックの音が聞えなくなって視界が透明になってから

道に戻って再度出発。

そんなことをしながら森に向かったのが懐かしいぐらい、

道もどんどん綺麗になっていて。

 

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先日訪れたとき、

「そういえば、クメール語を話していた鳥はどこに行ったんですか?」と尋ねたら、

「さあ・・・森で何かに食べられたんでしょうねえ。」というお返事。鳥さん。。。

 

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ここは、何もかもが、自然の一部でした。

 

家で飼っている数匹の猫ちゃんは、

ふら~っと来ては私の鞄で心地よさそうに眠り、

またふら~っとどこかへ消えていく。

 

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地球が24時間で1周まわっているのを忘れるぐらい、

のんびり、ゆったりと時間が過ぎるこの村が、

大好きです。

 

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男手は、家をつくり、畑を耕し、家畜を育て、

染めの材料や蚕の餌になる植物もこの森の中で生まれていく。

 

f:id:candyman0618:20170718205108j:plain村の女性たちは、子供をハンモックで揺らしながら

心地いいリズムでかたんかたんと布を織る。

 

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これは、バナナの皮を細く割いたものを

束にした生糸にくくりつけているところ。

これを染めてはバナナの皮を外し、別の所をくくってまた染めて、

そうやってパターンをつけた糸を織っていくことで

美しいクメール織の模様ができていくのです。

 

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村には、色々な植物が自生しています。

ジャックフルーツやパイナップル、ノニ、ライムなど、

シェムリアップ市街地に住んで居ると

普段は市場でしか目にしないようなフルーツも

あちこちに生っていて、

染料の一部として使われるものもあります。

 

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ひとも、くだものも、家畜たちも、そして丁寧に織られた布も、

カンボジアの大自然のなかのひとつ。

「わたしは土から布をつくる、錬金術師みたいなものでね」と

話しておられたことを思い出します。

 

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黒はアーモンド。

ピンクはラックカイガラムシ。

優しいサーモンピンクはココナッツ。

 

自然がつくりだす色は、どれも素朴で、美しい。

 

その色の出し方を知っているのは

カンボジアでクメール織に携わっていた人々。

 

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糸をひく。 染める。

パターンをつける。 織る。

それぞれの行程にプロフェッショナルが居て。

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内戦によって途絶えかけたその伝統を取戻し

新しい伝統を創っていくために

尽力した森本さんが居て。

 

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そして布に関わる全ての人に、暮らしがあって。

その暮らしが豊かであれば、良い布が出来る。

 

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その”豊かさ”は、決してお金のことではなく、

もっともっと本質的なこと。

 

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細くて白い糸を吐く様に品種改良された蚕ではなく

黄金のシルクをつくりだす在来種のカンボジュを飼育し、

 

自然の中でとれる染料を使って、

 

家族と引き裂いて、工場につめこむ「労働」では

とうてい実現出来ないような丁寧な「てしごと」を、

 

呼吸の速さで紡いでいく。

 

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(これはどうやって織ってるのかしら~!と、

一緒に遊びに行ったお兄さんのドレッドに興味津々のお母さん。

5年前の写真ですが、とても気に入っています。)

 

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伝統は、守るものではなく、つくるもの。

 

とても穏やかに語っておられましたが、

その瞳の奥には絶対に消えない炎がありました。

 

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「良い布」は「しごと」で決まるもの。

「しごと」は「人」がするもの。

「人」は「家族」と生きるもの。

「家族」は「自然」の中にあるもの。

 

地続きになったすべてを、

すべてを、大切にされていた森本さん。

 

言葉のひとつひとつが、

私の大切な宝物です。

 

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いちから村をつくり、そこで失われかけた伝統を復活させ、

国王から表彰を受けるほどの偉業を成し遂げられた森本さん。

 

それを感じさせないぐらい、

私のような若輩者にもフランクに接してくださって、

手づくりのお菓子も褒めてくださって、

本当に懐の深いお方でした。

 

いつもの定位置で煙草をくゆらしながら

優しい目で森を見渡す森本さんに

もうお会いできないかと思うと、

寂しくてたまらなくなります。

 

森本さん、いつも優しく色々なことを教えていただいて、

本当にありがとうございました。 

どうか、ゆっくりお休みになってください。

 

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ゆったりと心地いいカンボジアの風を身に纏っているような

ココナッツで染められたストール。

 

私の一生の宝物です。

 

 

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